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MSM−09 アゾック

 ジオン軍が開発した水陸両用モビルスーツ・MSMシリーズは、地球連邦軍の海軍に対し圧倒的な優位性を持ち、またたく間に制海権を独占していった。
 しかし上陸作戦においてMSMシリーズはその鈍重さから集中砲撃を受けやすく、とくに戦闘機からの攻撃により撃破される機体も少なくはなかった。この事実を重くみた軍部は、上陸作戦をサポートする水陸両用後方支援MSの開発を命じた。
 その要望に応じてジオニック社は「MSM−04 アッガイ」を転換した「MSM−04G ジュアッグ」を開発したが、アッガイをベースとした本機のポテンシャルは低く、期待した性能は得られなかった。

 キャリフォルニア・ベースの技術者たちは新型機の開発案として「MAX−03 アッザム」に着目した。アッザムはモビルアーマーの前身と位置付けられているが、実際には移動砲座の域を出ておらず実験機でしかなかったが、MSに移動砲座の性格を与えることこそ軍の要請に答える最善策と判断したのだ。

 本機は、その開発経由ゆえに、一世紀半を越える宇宙世紀の歴史においても、ひときわ奇抜な形状を有している。
 直上からみた場合、十字型に4本の腕が配されており、その先端には強力なクローとズゴックタイプのメガ粒子砲が装備されている。各腕から45°の位置にゴッグタイプのメガ粒子砲(収束率は遥かに向上している)が4基装備され、頭頂部にも1基(フェノンメーザー砲との説あり)装備、それを囲むように対空ミサイルが8門、肩アーマーと腰部には魚雷が装備された。これにより、前後左右、および上空にも死角のない支援が可能となった。本機はMSとして開発されたため脚部があるが、巨大な機体を支えられる歩行ユニットなど存在するはずもなく、ホバーにより移動する。

 大出力メガ粒子砲を9基装備した本機は、破格の破壊力を備えた支援用MSとして完成した。しかし過剰なまでに火力を追求した結果、本機は運用に支障が出てしまうほどの巨体となってしまった。またコスト面も量産不可能なほど高価な機体となっていた。本機は試作機が1機、造られたのみに終わり、量産機として「MSM−10 ゾック」の開発へと移行していく。

 ゾックの開発コンセプトも本機と変わりはない。だが、機体の軽量化、およびコストダウンのため各部が省略されている。腕部は2本とし、メガ粒子砲も前腕部への搭載を見送り腕の付け根への埋め込み式とされた。取り回しのよさを考えれば腕部搭載式の方が有効なのだが、コスト的に埋め込み式が勝っていたため、こちらが採用された。ミサイル、魚雷はすべて撤去された。これらによりゾックは30%以上の計量化を達成した。しかし、依然として対応しうる歩行ユニットは存在せず、ホバー移動に依存せざるを得なかった。余談だが、当時、開発を予定されていた「MS−16X(のちのMSN−02ジオング)」の脚部ユニットならゾックに対応できたとされ採用を検討したという説があるが、知っての通りジオングの脚部ユニットはア・バオア・クー戦にすら製作は間に合っておらず、それゆえ、この説は戦後、好事家がねつ造したエピソードとされている。
 ゾックは量産されたものの、生産数は3機にとどまった。一説にはゾックを越える水陸両用支援MSが開発されたために、急遽、ゾックの量産が打ち切られたと言われている。

 本機・アゾックは一年戦争末期の物資不足の際、実戦投入されたとされるが戦場での目撃例はない。これが本機と遭遇した機体が全て迎撃されたためなのか、本機が人知れず撃沈していたためなのかは、いまなお不明である。

 なお、本機の呼称は開発当初、「アッゾク」とされていたが、あまりに呼びづらいため「アゾック」と改められたことを付記しておく




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