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幌尻岳と七ツ沼カール
2001/07/21
今回で4回目くらいの幌尻岳。普段の行いもよく、快晴に恵まれました。
幌尻岳は日高山脈の最高峰であり、日本百名山の一つにも数えられていながら、日高の山の中では割と登山者に対してやさしいところでもあるので、団体を含め多くの人が訪れます。
山中でテント泊を考えれば、この辺りは幌尻に戸蔦別岳、北戸蔦別岳などを合わせて北部日高の中心部として一つの山域に捉えられるようです。
高みを目指すという意味でも端正な姿を持つ幌尻、戸蔦別両山は秀逸ですが、1万年程前まで、何度か訪れた氷河期の氷河の痕跡を残す、日本でもそう多くない地域として知られています。上の写真の残雪といくつかの沼が見えるのが「七ッ沼カール」。幌尻の頂上から右下のほうにあるのが「北カール」。
数千年前は海の下にあった地層が、少しずつ持ち上げられてできたという日高山脈。その後氷河に削られて形作られた鋭い稜線や険悪な沢が象徴的ですが、同時に日高の象徴の一つであるカールはとても穏やかです。鋭く削られた稜線からカールへむけて、滑落転倒を恐れながらしばらく下ると、途中からその傾斜がゆるくなります。ほっとすると同時に周りのお花畑に目が奪われます。
実はこれ、氷河期に岩の隙間の水が凍ったり解けたりするときに岩を砕いてしまう作用(凍結破砕作用)によって砕かれた岩屑が、それ以上崩れない安定した傾斜(安息角)に積もったところに、ゆっくりとした時間の中で作られたお花畑を見ているという事のようです。また、カールの中では「ナキウサギ」も出迎えてくれます。氷河期の生き残りともいわれますが、カールに響き渡るナキウサギの声を聞きながら、色とりどりの高山植物と周りをとりまく垂直に近い岩壁を見ていると、大きくゆっくりとした時間の流れを、少しだけ感じた気になります。
他にもと蔦別岳付近では、超塩基性のかんらん岩のごろごろと転がる岩塊斜面に目が行きます。その辺りでは、塩基性の強い特殊な環境でのみ生息する珍しい植物を見ることができます。そういうところにも自然のしくみの複雑さを感じます。
日高山脈の中でも最も訪れる価値のあるところだといえると思います。
運がよければクマさんにも会えますしね。皆さんも是非。